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Chp 6
The deception(企み)

それはソウルに冬が訪れ始めた、あるどんよりした日だった。冷たく、そして強い風がその辺り一面を暗く、そして寂しげな情景にした。ジニョンはドンヒョクの腕の中で静かに泣いていた。彼は彼女を固く抱きしめ、ソウルホテルのオ総支配人の埋葬式を見守っていた。葬儀関係者が埋葬地に土をかけ始めると、彼の妻は大声で泣き崩れた。テジュンとレオが彼女を慰めようとしていたその時、人々のすすり泣く声が辺り一面を覆った。ジニョンはドンヒョクの肩にしがみついていた。そして彼女はイ・スンジョンとオ総支配人の幼い赤ちゃんのことを思い、涙を止めることが出来ず、涙は流れ続けた。
“その赤ちゃんは幼な過ぎて自分の父親がわからない…運命はこの幼い娘やイ先輩にどうしてこんなに残酷なの?イ先輩は今からたった一人で、娘を育てなければならない。”
ジニョンは自分の鳴き声が聞こえないようにドンヒョクの胸に顔をうずめた。ドンヒョクは彼女の背中をやさしく撫でた。
“僕の愛するジニョン、大丈夫だよ。好きなだけ泣くといい。これからの人生において、僕たちが直面しなければならないことがいろいろ起こるだろう。でも僕は約束する。君は一人でそれに直面することはない。決してさせない。僕は君と一緒にそれらに直面するためにいつも君のそばにいるんだから。”

葬儀の後、ドンヒョクはジニョンと車で家に帰った。彼女がソファーに座り込んだとき、彼は彼女に水の入ったコップを渡した。
「ジニョン、少し身体を休めるため寝た方がいい。君は昨夜ほとんど寝てないじゃないか。」
そう、昨夜、彼らは午前1時くらいまで家に帰らなかった。ジニョンは葬儀場にいるイ・スンジョン先輩の側にいてあげたかったからである。ドンヒョクはジニョンのうしろにいた。後でレオもやって来た。
その日は土曜日だったので、他のホテルスタッフも参拝しては帰って行った。ジニョンは少し水を飲み、そしてたずねた。
「あなたはどうなの?私たち二人とも昨夜はほとんど寝てないわ。」
ドンヒョクは指で彼女の髪を撫で、やさしく言った。
「僕は大丈夫だ。君が寝ている間、僕はちょっと読みたいものがあるんだ。さあ、寝よう。」
ドンヒョクは立ち上がり、ジニョンを寝室に連れて行き、彼女をベッドに寝かせ、布団をかぶせた。
彼はベッドの上に座り、彼女の頬や腕を優しく撫でた。
「ジニョン、目を閉じておやすみ。ぐっすり眠るんだよ。」
ジニョンは非常に疲れていたので、彼の優しい声を聞きながら、穏やかにうとうと眠り込んだ。
ドンヒョクは身体を曲げ、彼女の額にキスをした。彼は彼女の顔のやわらかい肌に触れ、ささやいた。
“ゆっくりお休み、僕のジニョン。君の苦しみや哀しみを僕が代わってあげる。いい夢を見るんだよ。”
彼は部屋の外に出てブリーフケースから2冊のホルダーを取り出し、テーブルからジニョンの飲んでいた水を手に取り、飲んだ。その後、寝室に戻り、ベッドのそばのいすに座った。このして、彼はジニョンを見守りながら仕事をしていた。

ドンヒョクは最初のホルダーを開けた。それはJDメディチ社のアメリカ取締役会が、ドンヒョクの企画を推し進めるにあたり、彼との新しい契約内容を提案してきたものだった。それはかなり利益があるように思える。100%基本給与を増やす、会社は彼に100万ドル(US$)相当の会社の株を無料で提供し、それとは別に半額で同じく100万ドル(US$)相当の会社の株を買える権利を提供する。年2回のボーナスに加え、新しい投資顧客を獲得するために特別な権限を委任する。その代わり、契約は5年間でその間他の会社への転職することは許されない。またその書類にはJDメディチ社はすべてにおいて絶対的な権限を持ち、あなたはそれに従わねばならないと書かれていた。ドンヒョクはその契約内容の提案書を読み終え、そこに座り、考えていた。
“5年契約は長すぎる。5年の間に何がおこるかわからない。彼はかつてM&Aビジネスにおいて多くのお金を儲け、すべてを自分の思い通りに出来るその仕事に大変満足をしていた。ドンヒョクは彼の車のシートに隠されたあのホルダーのことをふと思い出した。JDメディチ社は皆が思っているような会社ではない。ある有名な巨大金融会社のように株式仲買人に賄賂を渡している可能性もある。信じられないことだか、よく行われていることだ。もし、この会社との新しい契約書に同意したら、将来、それらの人々によって行われうる不法行為による、他のややこしいゴタゴタに巻き込まれる恐れがある”
ドンヒョクはジニョンを見た。彼女の寝顔は天使のように穏やかで彼の心を和らげた。人生はなぜ彼女のようにシンプルで純粋になりえないのだろうか?追い詰めたり、追い詰められたり。それはかつてのドンヒョクのいた世界だった、しかしジニョンと知り合ってから、彼女は彼をすばらしい世界に導いてくれた。そして彼に愛情や温もり、そして思いやりの気持ちを注いでくれる”
ドンヒョクは思わず立ち上がり、ジニョンの方に行った。彼は彼女の顔に触れたい感情に駆られた。しかし彼女を起こしたくない。彼は結局、彼女の髪にやさしく触れ、サイドに寄せ、自分のいすに戻った。
彼はため息をついた。自分の世界に戻る時間だ…ドンヒョクは2冊目のホルダーを手に取った。
それはソウルで新しい会社をおこすというレオのビジネスプラン。ビジネスの展望とサービス、顧客の基盤など。レオはおのおののカテゴリーを詳細に調べ、十分な下準備をしていた。投資情報やその他のサービス(たとえばファイナンシャルプランニングやオンラインでの投資家への市場のシェアやランキングの情報提供など)を提供している約120あまりの会社のデーターによると、そのビジネスは年間およそ600万ドル~800万ドル(US$)相当額の売上が見込まれる。もし評判がよくなって顧客や申込者が増えれば、もっと多くの売上げが見込まれる。それに彼がすることはすべて完全に自分の思い通りにできる。
ドンヒョクはそのプランについて考え始めると、JDメディチ社の秘密がどうでもよくなった。JDメディチ社との一年契約もあと2,3ケ月で終わるから、その後すぐそこを辞めて、そのことすべてを忘れよう。
彼らは極秘資料がまだ僕の手元にあることを知らない。JDメディチ社との契約がすべて終わった後、それを破り捨てよう。JDメディチ社を辞める利点はもうひとつある。彼はまもなくソン管理重役と何の関係もなくなる。それに彼はジニョンを見るソン管理重役の貪欲な目つきに我慢する必要もなくなるのだ。

ドンヒョクは安堵のため息をし、両方のホルダーを閉じた。時間を見ると午後2時45分。ジニョンは1時間以上も寝たままだ。彼は立ち上がり、ベッドに座り、彼女の頬にやさしく触れ、彼女を目覚めさせた。
ジニョンは目を開け、彼を見た。ドンヒョクは微笑み、たずねた。
「ぐっすり眠れた?まだおなかすいてない?」
「ぐっすり眠ったわ。何年も寝てないくらい眠かった。もう少し眠りたいから食べたくないわ。あなたはどう?おなかすいたの?」
「いいや、おなかすいてないよ。今朝朝食をたくさん食べたから。もう一度寝る前にミルクを飲んだほうがいいよ。そして今晩おいしいものを食べに行こう。いいね?」
「楽しみだわ」ジニョンは微笑んだ。
ドンヒョクは冷蔵庫からミルクを取り出し、コップに入れ、彼女に飲ませた。ジニョンはそれを飲みそして尋ねた。
「あなたは今から何をするの?全然寝てないの?私と一緒にお昼寝しない?」
ジニョンは少し端に寄り、布団を開け、ベッドの上を手でたたいた。彼女のしぐさがとてもかわいらしく、ドンヒョクは笑ってしまった。彼はすぐに靴を脱ぎ、ベッドに飛び込んできた。彼が飛び込んできたために、彼の大きな体格と体重でベッドを大きく揺れた。ジニョンは枕の位置を整え、布団を彼にかけた。
彼は彼女を自分の胸の中に抱きこもうとすると、彼女が抵抗して言った
「見てよ、こんなに布団がぐちゃぐちゃになったじゃない。きちんと寝て。そしていい夢を見ながらゆっくり寝ましょ。」
「はい、奥様。でも君は僕を抱きしめないといけないよ」
「いいわ。じゃ、足をもう少しまっすぐ伸ばして。そうすると快適でしょう。」
ジニョンは指示した。ドンヒョクは足をまっすぐに伸ばして言った。
「後、君はこことここにキスをして。」
彼は自分の頬と口を指し示した。
「頬だけにキスするだけでいい? 安売りはしちゃいけないのよ」
そうジニョンが言うとドンヒョクは不満そうな顔をした。
「わかったわ。あなたは注文が多すぎるわ。」
ジニョンはそう言うと、彼女はもぐり込んで彼の頬にキスをし、その後、彼の唇にキスをした。彼女の唇はミルクの味がした。彼はだんだん彼女を離したくなくなってきた。彼女の身体の周りを彼の腕で囲み、彼女をしっかりと抱きしめた。とても長く離れがたいキスの後、ジニョンは少し身体を離し、深く深呼吸した。彼女は顔を真っ赤にしてドンヒョクの胸をたたいた。
「悪い人ね。あなたはいつもそうなんだから。」
ドンヒョクは満足そうに微笑んだ。
「僕は寝る前に抱きしめられたいんだ」
ジニョンは頭を振った…まるで大きな赤ちゃんがいるみたい。彼女はそばに寝て、そして一方の腕で彼を抱きしめた。
「お休み、ドンヒョク」
ドンヒョクは彼女が居心地が悪そうな状態であるのを見て、思い直した。
「いいよ、代わりに僕が君を抱きしめるよ。」
ジニョンは身体に向きを変えた。ドンヒョクは左腕を開き、彼女はその腕の上に自分の頭を置いた。彼は彼女を自分の腕の中でしっかりと抱きしめ、やさしく彼女を見た。彼はもう片方の手で彼女の顔をやさしく撫で、彼女の名前を呼んだ。
「ジニョン…ジニョン…」
ジニョンは指で彼のまぶたを閉じようとした。
「私の名前を呼びながらどうやって寝るの?目を閉じて寝ましょう。わかった?」
彼女は彼の顔をやさしく撫で、彼の頬にキスをし、そしてささやいた。
「ぐっすり寝て、ドンヒョク」
ドンヒョクは幸せそうに微笑み、目を閉じた。
“わかったよ、ジニョン。僕は寝るよ、そして君と一緒に素敵な同じ夢をみたいんだ”

ミラー氏と執行役員のモーガン氏と協議した後、ドンヒョクは自分のオフィスに戻った。
彼は新しい契約書の会社側の申し入れを受け入れられないことを彼らにはっきり告げた。しかし、彼らはかなりしつこく、彼の要求を加えた新しい契約書を起草するように彼に頼んだ。ソン管理重役とソフィア・ローガンがドンヒョクの後、別の会議に呼び出された。
“彼らはおそらく僕が契約更新を拒否したことを話したかったのだろう。なぜ彼らはそれを受け入れることができないんだ?”
ドンヒョクはレオと新しい投資調査会社について話していたことを思い返していた。二人が新しい会社で再びコンビを組むことをレオはとても喜んでいた。レオはここに滞在してソウルが好きになったようだし、しばらくここに住み、必要ならば、長く滞在することも考えているようだった。

空いた残りの時間で、彼は自分の手帳をチェックしていた。不動産屋と午後5時に約束をしており、2,3の物件を視察することになっている。彼はジニョンを驚かすために早く家を買いたかった。ジニョンの仕事が終わるのが今日の午後6時半。家を視察した後、ちょうどよいタイミングで彼女を迎えに行く時間になる。今、午後2時半。あと2時間だ。ドンヒョクは携帯用パソコンを開けた。そして机の上にある携帯電話を見た。彼は電話をかけるのを我慢することができなかった。そしてソウルホテルの受付の番号をダイアルした。電話からジニョンの声が聞こえてくると、彼は微笑んだ。
「こんにちは、ソウルホテル受付でございます。何か御用ですか」
「君だね、シン夫人。君がいなくて寂しいって言ったらどうする?」
「ドンヒョク、どうしたの?あなたはオフィスにいるの?」ジニョンは声を小さくした。
「そうだよ。僕はオフィスにいる。君がいなくて寂しいと言いたくて電話したんだ。」
ジニョンはしばらく黙り、そしてまるでささやくようにとても優しい声で言った。
「寂しがらないで、私は仕事が終わったらあなたに会うのよ…」彼女は一瞬黙り、そしてささやいた。
「私もあなたがいなくて寂しいわ。」
彼女がささやいたその言葉が彼の心にまっすぐに伝わった。彼はささやき返した。
「愛してるよ、ジニョン」
「….私も愛してる…」彼女のささやきはとてもやさしくて、ドンヒョクは静かにそのささやきを聞いて、微笑んだ。
「じゃあ、電話を切るね、ジニョン。午後6時半に君を迎えにいく。」
「わかったわ、じゃあ後でね」
ドンヒョクは電話を置いた。すると彼のオフィスのドアのところにソン管理重役とソフィア・ローガンの二人が立っているのが見えて驚いた。
“彼らはいつドアを開け、僕の話を聞いていたんだ?”
ソン管理重役は彼の机の方に歩いてきて、ウインクをした。
「かわいい奥さんとまた話していたのかい?」
ドンヒョクはうなずき、何も答えなかった。“僕のことはほっておいてくれ”ソフィアが彼を見て微笑んだ。
「あなたの奥さんは本当に幸運な人ね」
ドンヒョクは彼女の言葉を無視し、そして二人に尋ねた。
「お二人とも、僕に何か話しがあるのですか」
ソン管理重役がドンヒョクと反対側に座った。
「そうなんだ。ソフィアと僕は君の契約更新について、ミラー氏とモーガン氏と会議で論議したよ。」
「ミラー氏とモーガン氏が僕の決断をあなた方二人に話したと思っていましたよ」
ソフィアはソン管理重役の隣のいすに座り、そして言った。
「会長も執行役員もあなたを大変高く評価しているし、あなたに考え直して欲しいと思っているのよ。彼らはあなたの要望を書いた契約書を見たいと言っていたわ。」
「ソン氏、ローガンさん、僕は彼らの申し入れが不服とか、僕の要望を通して欲しいという理由できめたんじゃないんです。むしろ、違う仕事の道を選んだだけなんです」
「君の新しいプロジェクト、特にアメリカの取締役会が承認した新しい世界的な投資信託のプロジェクトはどうするんだ?」
「この新しい投資信託を立ち上げ、そして始めるために、あと数ヶ月ここにいる間に僕がするべきことは何でもするつもりでいます」
中途半端で放っていくのは僕とスタイルではない。僕がここを去る前にすべてを終わらせ、そしてうまく譲り渡したい。」
ドンヒョクはそう言い、ソン管理重役の目を見た。ソン管理重役はドンヒョクの決心した目つきを見て、自分が彼より少し劣っているように感じた。アメリカの取締役会もこのすぐれた知性を持った男の頭脳を認めて、何とかしてこの男を引き止めたがっているようだった。
ソン管理重役はソフィア・ローガンを見て、そしてドンヒョクに言った。
「わかった。僕はこのことにミラー氏とモーガン氏に伝えよう。君が我々のライバルの一人に
ならないことを祈っているよ」
ドンヒョクは微笑み、ソン管理重役の本心がはっきりわかった。
「ソン管理重役、それに関しては安心してください」
ソン管理重役とソフィア・ローガンは彼のオフィスから出て行った。ドンヒョクはソン管理重役の目に失望感が表れているのを見ていた。
“そう、これでいいんだ。”
彼はそう思い、そして携帯パソコンのスイッチをつけた。

ジニョンはヨンジェに一日のスケジュールを手渡すと、ヨンジェはすぐにそのリストを見てたずねた。
「ジニョン先輩、あなたは午後からの受付を心配しているんですよね」
「違うわよ、社長から総支配人候補と面談するための書類を準備してくれと頼まれたのよ。
「なぜあなたが総支配人に昇進しなかったんですか?」
「そうでしょう。あなたからも彼に言ってよ。でもおそらく私は総支配人になるほどタフじゃないのよ」
「その通り、シン夫人。」
後ろから聞こえたテジュンの声にジニョンはびっくりした。彼は続けた。
「君はもうランチに行ったのか?午後3時前には面談する2人の候補人が来るんだから、食事から戻ったらすぐ書類を作って下さい」
「わかりました。社長。あなたの書類を準備するために30分で戻ってきます。」
ジニョンはブスっとした顔で言った。
テジュンは彼女を見た。
「ドンヒョクとランチを食べないのか?時間はあるぞ。急ぐ必要はない」
「いいのよ、彼は今日とても忙しいから私と一緒にランチを食べれないのよ。」
ジニョンは立ち去り、ぶつぶつ言い続けていた。
“男は皆同じね。自分たちはとても優秀で、自分の仕事が優先されるといつも思っているんだから”
テジュンは彼女がぶつぶつ言っていたのをすべて聞いていた。
君の知っているドンヒョクはそうじゃないだろう。ドンヒョクはジニョンと一緒になるためだけに、すべてのものを捨てた。彼はそう考えていると、ふとした不安が頭をよぎった。彼は頭を振り、自分のオフィスに帰って行った。 

ドンヒョクは微笑みながら、新しい家の権利証書を見た。すべてが、彼の計画通りのように思える。
彼は念願の家を手にした。それは庭に囲まれた素敵な2階立ての住宅だ。彼はあと、裏庭に作る予定のプールの工事を手配しなければならないだけだった。それですべて完璧だ。あと数日で、ジニョンはその家を見て、とても驚き、喜ぶだろう。彼が彼女とのランチを断ったのは、この家の書類を調えるためだった。
“とても気に入るよ、ジニョン、君は僕が黙っていることに今すこし怒っているかもしれないけど、君がその家を見たときの驚きは、よりいっそう大きく、そしてとても幸せなものになるよ。”
彼はランチを断ったときの電話での彼女の不機嫌な声や、最近なぜたくさん隠し事をしているの?という彼女の疑いの言葉を思い出していた。それに対して、彼は笑顔で答えていた。
「もう少し我慢して、ジニョン、もうすぐ分かるから。」

レオはドンヒョクの指示の元、新しい会社を始めるに、非常に忙しかった。会社を立ち上げるにあたり、チェックすることや、準備する多くの要因がある。ドンヒョクがJDメディチ社を退職することに関して、JDメディチの取締役会からは、もはや何も言ってこなかった。彼らはおそらく、僕の決心を変えることが出来ないということを悟ったのだろう。彼らやソン管理重役に、また何度も自分の見解を言わなくて済むのはありがたい。シン・ドンヒョクの決心は明らかだし、それで決定なんだ。”


ソン管理重役がノックした後、現れた。彼は中に入り、笑顔でドンヒョクの机の上に一冊のパンフレットを置いた。
「おめでとう、ドンヒョク。これは君が企画した新しい投資信託の内容説明書だ。僕は印刷会社からそれを取ってきた。」
ドンヒョクはそのパンフレットを開けた。それは感じよく、内容に合ったデザインだ。彼はソン管理重役を見て、そして尋ねた。
「その新事業の開始日はもう決まったのですか」
「それはヒルトンホテルで朝食を伴った新事業開始会議が開かれる木曜日になるだろう。明日、アメリカの取締役会から何人かの幹部が、その準備をするためにここに来る予定だ。」
「それはよかったですね。僕が思っていたより早いです。」
JDメディチに勤務するのも、残すところ後4週間になったとドンヒョクは考えていた。
「この新しい信託事業を立ち上げ、軌道にのせるよう君が頑張ってくれたおかげだ。ところで、今夜、この新しい投資信託事業の立ち上がるお祝いをするためちょっと飲み行きたいんだけどな」
ドンヒョクは一瞬躊躇ったが、うなずいた。
「それはいいですね。大丈夫ですよ、ソン氏」
「よかった。では一時間後の6時半ごろにしよう。ところでソン氏と言わずにファン・オと呼んでくれないかね。僕は自分の苗字の響きが好きじゃないんだ」


「わかりました」
ソン管理重役はオフィスを出て行った。ドンヒョクは少しほっとした。“新事業は出発式のあと、その事業はいよいよそこから始まる。それを引き継げばOKだ。ソン管理重役は僕が辞めることに対してそれ程怒っていない様子だった。彼を味方にしておく為に、彼と一杯飲みに行くのもいいだろう。それにジニョンは今晩遅番だし。彼は電話を取り、ジニョンにダイヤルした。
「ドンヒョク、今日一日中、ここは大忙しよ。小さな問題がいくつも起こったのよ。」
ジニョンの声はとても忙しそうに聞こえた。
「わかったよ、ジニョン。君の仕事が終わる午後11時に、迎えに行くということを言うために電話したんだ」
「ドンヒョク、その必要はないわよ。家に帰って休養して。5時間以上も私を待っているなんてすごく疲れるわ」
「心配しないで、ジニョン。僕は仕事の後、ソン管理重役と少し飲みに行くんだ。その後、君を迎えにいくよ」
「分かったわ、後でね。私はもう行かなくちゃ行けないの。トランシーバーがビービー鳴ってるの。ドンヒョク、夕食取ること忘れないで。飲むだけじゃあなたの身体に良くないから」
「わかったよ、ジニョン。きちんと夕食を食べてお酒は少しだけにするよ。それでいいかい?」
「それでいいわ。」彼女は笑い、そしてささやいた。
「ドンヒョク、あなたは素敵だわ。そして….」
「そして君はますます僕を好きになった?」ドンヒョクがからかった。
「ドンヒョク、今私は本当に時間がないのよ。行くわ。午後11時にね。バイバイ」
その後、ジニョンは急いで電話を切った。ドンヒョクは微笑んだ。彼女が忙しい時に、僕がからかっているのを聞いているジニョンの顔を頭に思い描いていた。
“君は永遠に僕の人生において、喜びをもたらしてくれるもっともかけがえのない人だよ”


ドンヒョクはソン管理重役がお酒をたくさん注文していたのを止めようとした。
「ファン・ウ、僕は今日、車なんです。たくさん飲むことができないんですよ」
「大丈夫だよ。今晩、その時間帯は渋滞もしていないよ。今日で最後の飲みなんだよ。」
ドンヒョクは時計を見た。午後10時15分。彼は立ち上がり、そして言った。
「すみませんが、僕はお手洗いに行ってきます。あと一杯だけなら注文してもいいですが、それ以上は飲めません」
ソン管理重役はうなずくと、ドンヒョクは部屋を出て行った。彼はお手洗いに行き、ソン管理重役がなぜ今夜飲みに行くために、個室を予約したのか少し不思議に思っていた。普通ならバーに座るのに。
とにかく、彼はジニョンを迎えに行くのに、少し酔いを醒ます必要があった。ドンヒョクが戻るとソン管理重役は最後の一杯をすでに飲んでいた。彼はドンヒョクにグラスを渡した。
「さあ、ドンヒョク、新しい投資信託事業のお祝いの最後の一杯だ。」
ドンヒョクはそのグラスを手に取り、そして飲んだ。ソン管理重役は、ドンヒョクよりたくさん飲んでいたが、まだ少し飲んでいた。彼はドンヒョクを見て言った。
「なあ、ドンヒョク、僕は君の才能、そして君の成功を見て、少し君がうらやましいよ。」
「ファン・ウ、あなたは成功していないんですか?あの大きな金融会社の一つの地域を任された管理重役として」
「う~ん、管理重役か…はあ~….君は本当は上司の言うことを聞いていろいろ頑張っていくべきなのに..君は成功していないけど、やっぱり僕は君がうらやましい。君はかわいい奥さんと一緒に幸せな生活を送っている。」
“そうだ。僕はとても幸せだし、僕の妻は僕が世界でもっとも愛している女性なんだ”
ドンヒョクはそう思いながら、そのお酒を飲み干した。彼は向きを変え、ソン氏に言った。
「もう行きましょう。大丈夫ですか?」
「もちろん、僕は飲んでいない」
ドンヒョクは立ち上がり、自分のブリーフケースに手を伸ばそうとしたとたん、突然頭が痛くなった。
彼は頭を振ったが、どうにもならなかった。彼の目の前のすべてのものがかすみ、そして真っ暗になった。彼はソファーに倒れ、何が起こったのか分からなかった。


ジニョンは時計を見ると午後11時45分。ドンヒョクはまだ現れない。
“こんな夜遅く事故か何かあったんじゃないわよね。”ドンヒョクの携帯がつながらない。彼女は家にも電話してみたが、そこにもいない。彼はどこにいるのかしら?なぜ携帯の電源を切っているのかしら?どこかで事故に遇ったのかしら?“
ジニョンはそんなことをあれこれ考えているうちに怖くなってきた。ドンヒョクに悪いことなど起こるはずがないわ。彼女は頭の中でそう繰り返し、自分を落ち着かせようとした。
ヨンジェが彼女を見て、そしてたずねた。
「ジニョン先輩、ジェニーを待っているんですか」
「ジェニー?」
「はい、ジェニーはあと数分で仕事が終わりますよ」
「本当に?ジェニーはお兄さんがどこにいるか知っているかもしれないわ。」
そう、ジニョンは立ち上がり、そしてヨンジェに言った。
「ヨンジェ、私はジェニーと一緒に家に帰るわ。また明日ね」
「じゃあ、ジニョン先輩」
ジニョンは急いで女性の更衣室に向って行った。彼女はそこにまだジェニーいるのを見て少し安心した。
ジェニーはロッカーを閉め、そして尋ねた
「ジニョンお姉さん、まだここにいたの?」
「ジェニー、あなたのお兄さんはあなたに電話してこなかった?」
「お兄さん?いいえ、私は昨日、兄と話したけど、今日はまだ電話で話してないわ」
「本当?」
ジニョンはまたジレンマに引き戻された。
「どうしたの?おねえさん。兄はどこにいるの?」
ジニョンは何か良からぬことを感じた。
「私もわからないの。彼は午後11時に私を迎えにくるつもりだったはずなのに、今はもう12時よ。
彼が現れないの。私は彼の携帯に掛けているんだけどつながらないのよ。」
ジニョンはそう言った。彼女の声はすこし震えていた。
「たぶん彼は友達と一緒か、まだ仕事中なのよ」
「彼は管理重役と飲みに行くけど、少ししか飲まないって。その後、時間ちょうどに私を迎えに来るって言ったのよ。たぶん何かあったんだわ….事故….」
「ジニョンお姉さん、慌てないで。兄は大丈夫よ。家に帰って、兄を待ったほうがいいと思うわ」
「そうね。私は家に帰るべきよね。彼は少し遅くなって、後で家に帰ってくるかもしれないわ。」
ジニョンは了解し、彼女はジェニーの手を握って、家路についた。

ジェニーはジニョンが、とてもいらいらした状態でソファーに座っているのを見た。彼女は台所に行き、
飲み物を作り、そして言った。
「ジニョンお姉さん、兄を待っている間、お茶でも飲みましょう」
ジニョンの震えた手がティーカップに触れた。そして言った
「ジェニー、あなたは遅番でとても疲れているのね。あなたはもう寝なきゃいけないのに。私は一人であなたのお兄さんを待つから大丈夫よ」
「心配しないで、お姉さん。私もあなたと一緒に兄を待つわ。私の勤務は午後一時からだから、明日ゆっくり眠れるわ。」
「ありがとう、ジェニー」
ジニョンは低い声で言った。彼女はジェニーが近くにいてくれたので気分が楽になった。
彼女たちがお茶を飲んでいると、午前2時にドアのベルが鳴った。ジニョンはすぐに起き上がり、そしてドアを開けた。
そこにはソン管理重役と西洋人の女性がいた。彼らは意識のないドンヒョクを引きずってくるのに悪戦苦闘していた。“彼に何かあったの?”
ソン管理重役は言った。
「こんばんは、ジニョン。申し訳ない。ドンヒョクは飲みすぎたんだ。」
ジニョンとジェニーの助けを借りて、彼らはドンヒョクをベッドに寝かせた。
西洋人の女性がジニョンを見て、そして彼女に手を差し伸べた。
「はじめまして、シン夫人、私はソフィア・ローガンです。ドンヒョクの同僚であり、友達です」
ジニョンは丁寧に彼女と握手をした。ソン管理重役もジニョンを見て微笑んだ。
「じゃ、僕たちは行きます。ジニョン、このように彼を遅くまでつき合わせて申し訳なかった。僕たちは新しいプロジェクトのちょっとしたお祝いをしていたんだ。みんなで少しはめをはずしてしまったんだ。ではおやすみ」

「おやすみなさい、ソン氏。おやすみなさい、ローガンさん。どうもありがとうございました」
彼らが帰った後、ジェニーが立ち上がりそして言った。
「ジニョンお姉さん、私も帰るわ。もうあまり心配しないで。兄は大丈夫だからね」
「そうね、ありがとう、ジェニー。一人で帰れる?」
「もちろんよ。すぐそこじゃない。じゃあね、ジニョンお姉さん」
「バイバイ、ジェニー」
ジニョンはドアを閉め、そして洗面台の方へ行った。彼女はハンドタオルを取り、少しお湯で濡らした。
ジニョンはベッドに座り、軽くドンヒョクの顔や首を拭いた。アルコールのにおいもなく、よく眠っている。彼の髪を撫で、そして彼の頬にキスをした。ぐっすり眠って、あなた。明日の朝になれば元気になるわ。ジニョンは明かりを消し、ドンヒョクが自分のそばにいるという安心感を感じながら、彼の横に身体を横たえた。“何も悪いことが起こらなくてよかった。本当によかった。”


ドンヒョクは会議室の中に入った。ミラー氏、モーガン氏、そしてソン管理重役は座り、彼が来るのを待っていた。彼はお辞儀をし、そして遅れたことを詫びた。ミラー氏は微笑んだ。
「大丈夫だ、シン氏、君は昨夜、すごい夜だったみたいだね」
ドンヒョクはソン管理重役を見た。彼はテーブルの上に開けられたホルダーを見るのに忙しそうだった。
彼はしぶしぶうなずき、そしてたずねた。
「あなた方は、僕と話し合いがしたいんですよね」
「そうだ、シン氏。これを見てくれ。」
ミラー氏は、ドンヒョクの前にホルダーを取り出した。ドンヒョクは怪しげな匂いがするミラー氏の顔の表情が嫌だった。彼はホルダーを開けた。それは彼に対する新しい契約書で、彼が拒絶したのと同じものだった。ドンヒョクは、見上げて、話そうとしたその前に、ミラー氏が先に言った。

「シン氏、我々は新しい契約書に載せた特典を、君にとってさらに有益になるよう少し変更した。
それは、基本給与を200%増やし、そして提供する社債も2倍にするというものなんだ。」
ドンヒョクは頭を振り、そのホルダーを閉じ、そして言った。
「ミラー氏、僕はあなたが誤解されているとは思えない。僕がJDメディチ社を辞める決心をしたのは、
単に別の職種を選択したからなんですよ。あなた方が僕に提示した最初の内容に合意できないからじゃないんです。僕へ提供するものをどんなに増やしたとしても意味がありません。僕はいったん決断したら、それを固守します。僕の決心を変えられるものは何もありません。」
「本当かな?」
ミラー氏はドンヒョクに対してまた違う目つきをした。彼の方にある封筒を投げた。
「シン氏、それを見てくれ」
ドンヒョクは封筒を手に取り、そしてそれを開けた。その中にはたくさんの写真が入っていた
….僕の写真?….女性とベッドで裸で…ソフィア・ローガン!!

ドンヒョクは憤りを感じ、封筒をテーブルに置き、そして立ち上がって、大きな声でたずねた。
「それらは何ですか?」
「落ち着きたまえ、シン氏。それらは昨夜、君がソフィア・ローガンと夜を過ごした証拠だよ。その写真はどう?よく撮れているだろう?」
ミラー氏は微笑みながらそう言った。それを聞いて、ドンヒョクはテーブルを飛び越えてその薄汚い顔を殴りたかった。何とか、彼は怒りを抑えることが出来、そして椅子に座った。ドンヒョクはソン管理重役の方を見ると、彼は目をそらした。
“そういうことか、これは企みだ。”
ミラー氏は続けた。
「我々は君が奥さんをとても愛していることを良く知っている。君の奥さんはそのような美しい女性と愛し合っていたことを責めるのではないのかな、シン夫人はこれらすべてのことに対し君を許してくれるのかな?シン氏、我々も男だから、よくわかるよ。もちろん、君のために、このことを秘密にするよう我々は最善をつくすよ」
ドンヒョクは割り込み、そしてとても冷ややかな声で言った。
「つまり、JDメディチ社と契約更新をすることが条件なんですね」
「その通りだ。シン氏、君は物分りが早く、大変頭がいいよ。とにかく、君には我々に加わってもらいたいんだよ」

ドンヒョクは立ち上がり、そして言った。
「これ以上論議はできません。僕はそのことについて2,3日考える時間が必要です」
「もちろんだとも。我々は、今週いっぱいここにいる予定だ。だから君に時間をあげよう。
とにかく、君の情報、テープに撮った君のあの親密な瞬間は、我々が持っているんだよ。
たとえ君がそれを見たくても」

ドンヒョクは返事をせず、会議室を出た。彼は自分のオフィスに戻り、そしてドアを閉めた。彼は椅子に座り、そして自分を落ち着かそうとし始めた。
“….シンドンヒョク落ち着け、そしてゆっくり考えるんだ。これは企みだ。敵は最初に動いてきた。君はどんなことがあってもジニョンを失うことは出来ない。絶対に!それは、君の人生においての新しい戦いなんだ。ドンヒョク、ゆっくり考えるんだ。そして君のために、そしてジニョンのために手段を探すんだ」


Author (in English) - Rene
Translator (Japanese) - Hirorin
Coordinator- Milomomo (aka lovemail)