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レオは、ドンヒョクをイ・スンジョンマネージャーのアパートの書斎に連れて行った。その書斎は、 ソウルホテルの総支配人だった故オ・ヒュンマンが自分の仕事をするために使っていた。その部屋の 中には、多くの写真が飾られていた。ドンヒョクは、レオがそのアパートのことをよく知っていること に驚いた。 レオがスンジョンと非常に仲の良い友達で、彼女の家によく来ていることは明白だ。レオは2つの ホルダーを取り、そしてドンヒョクの前にそれらを置いた。ドンヒョクがその書類に目を通しているとき、 彼は言った。 「それらは、大規模な裏取引の件で君が僕にくれた手がかりから得た情報なんだ。それらの関連会社は、不正な台帳と模造の台帳を含む独自の会計簿を持っている。それはJDメディチ社が所有する自分たちの会社の株価を優勢にするためのものなんだ。2年前にハイテク関連株の大暴落が起こったとき、JDメディチ社はとても幸運にも、大暴落の前にもっとも高い高値でそれらのハイテク株のすべてを売り払った。そしてそのため、多くの投資会社は破綻に追い込まれた。JDがハイテク株を売り払った後、JDメディチに売り時の情報を流したそれらの会社の重役たちに、報酬が支払われていたようだ。そして、株価が下がる前に関係を断ち切っている可能性がある。」 「実際、彼らが手にした総額はかなりの金額だろうな、それらの重役たちはまだこの業界にいるのかい?」 「これらの詳しい情報は、証券取引委員会がインサイダー取引や横領容疑に加えて、インサイダー取引とJDメディチ社の関わりの件に関して、携わった重役たちに責任を追及することが出来るほど十分すぎる ものなんだ。これらはまた、JDメディチ社からの贈賄に対する独立腐敗防止委員会の調査によるもので もある。」 ドンヒョクは微笑みそして言った。 「レオ、ソン管理重役は、JDが犯したすべての不正取引や他の余罪に関する重要書類の多くを持って いると思うんだ。それらに関係ある多くの書類は彼の家にあると思う」 「君は泥棒になろうとは思ってないだろうな?」 レオはそう言い、そしてメガネを持ち上げた。 「ばかなことを言うな、レオ。僕たちはそんなことはしない。それに、そのアパートのセキュリティー システムは、最高級の感度に設定されているから、中に入ることは不可能だ。ドンヒョクは顔をしかめ ながら、レオに言った。 「僕はある方法を考えているんだ。レオ、時間のある時に、ソン管理重役のプロフィールや私生活の 詳細を手に入れてくれ。それはきっと重要な証拠を見つけるのに役立つだろう」 「フランク、JDメディチ社の取締役会が、ソン管理重役をアジア太平洋支局の管理重役の座に置き続けるのはなぜだと思う?JD社に対する彼の忠誠心を評価しているからか?」 レオはたずねた。 「おそらく、彼がJDメディチ社の犯した犯罪のことを多く知りすぎているし、多くの証拠を持っている からだと思うんだ。」 ドンヒョクはそう言いながら、そのファイルを閉じた。彼は2冊目のホルダーを手に取り、そして 証券取引委員会の情報に目を通し始めた。そして彼はあごの下に両手を置き、たくらんだような面持ちで 目を輝かせ、そして落ち着いた声で言った。 「レオ、水曜日に証券取引委員会と会うんだよな。JDメディチ社に関する彼らの以前の調査資料の詳細 内容は、僕たちが調べている内容と大いに合致している。僕が思うに、僕たちが証券取引委員会にJDメデ ィチ社の裏取引の詳細を公表すると、彼らが関連会社と関係している重役たちの銀行の預金内容や プロフィールを確認するのに2,3週間かかる。すべての証拠が揃ってから一週間以内に責任を追及 できる起訴の段階まで持っていくだろう。つまりすべて完了するのに3週間はかかるんだ。関連会社 への責任追及が始まると、JDメディチ社はその状況に気づくだろう。JD社は手元にあるあらゆる証拠を消そうとするだろう。だからJDが証拠が消す前に、情報を得る時間は3週間しかないということだ。」 「君は自分でJDメディチ社の証拠を得ようとしてるの?」 レオは考え込んでいるドンヒョクをじっと見つめた。 「僕はソン管理重役に近づき、奴らの証拠を得る多くの手がかりをぽろっと言うことを期待しているんだ」 ドンヒョクはそう言い、証券取引委員会のホルダーを閉じ、そしてこう言って締めくくった。 「君が水曜日に証券取引委員会と会った後、木曜日に会って打ち合わせをしよう」 彼は時計を見た。もう正午だ。ジェニーとジニョンがもうすぐここにやって来るにちがいない。 レオは2冊のホルダーを自分のブリーフケースに入れ、そして陽気に言った。 「これが終わったら、僕たちは始めようとしていた投資調査ビジネスに着手できるなあ」 「僕もそれを強く望んでいるんだ。僕は正直言って、このゲームに疲れ果てているんだ。シンプルな 何かをしたいし、家でゆっくり過ごしたいよ。」 ドンヒョクは低い声で言った。 「食事の用意をしているのを手伝うため出よう」 レオはブリーフケースを閉じ、そして立ち上がった。 「君はソウルホテルのハウスキーピングのマネージャーととても仲がよくなったんだな、レオ。君が こに滞在している理由は彼女なのか?」 レオは何も答えず、ドンヒョクにウインクした。そしてドアを開けて部屋から出た。その時、ドアベル が鳴り、一瞬ドンヒョクの心臓の鼓動が止まった。レオがドアを開けると、ジェニーとジニョン、そしてヨンジェが中に入ってきた。ジェニーとヨンジェはテーブルの上にラップをした2つの大きな盛り皿を 置いた。 そしてジェニーは言った。 「スンジョン先輩、私はランチのためにマリネ漬けをしたお肉とサラダを作ってきたの」 「ありがとう、ジェニー。あなたはごちそうを持ってきてくれると思っていたわ。友達にシェフがいると、 いつもおいしいものが食べられるわ」 スンジョンはうれしそうに言った。 「スンジョン先輩、赤ちゃんはどこ?」 ジニョンがたずねた。彼女の声はまだ弱々しかった。 「あの子はまだ寝てるわ。そうだ、ジニョン、あなたの旦那様もここに来てるのよ。」 スンジョンがそう答えると、ジニョンは周りを見回した。そして、ドンヒョクが書斎の部屋のドアの側に立っているのが見えた。彼の目はとてもやさしいまなざしで彼女を見つめていた。まるでその部屋には 彼女しかいないかのように。彼女は反応を示す前に、ジェニーはドンヒョクの方に彼女を押して言った。 「お姉さんはここよ、お兄さん。お兄さんたちはきちんと話をしたほうがいいと思うわ。20分でジニョンお姉さんと仲直りしてね。そして昼食を食べに出てきてね。」 ドンヒョクは仲直りする機会を得た。そしてジニョンの手を握り、彼女と一緒に書斎に入り、ドアを 閉めた。部屋の中に入ると、ジニョンは手を離し、そして疑いのまなざしでドンヒョクを見た。 「あなたは誰?本当のドンヒョクそれとも見せかけのドンヒョク?」 ジニョンのその言葉を聞いて、ドンヒョクの心はひどく痛んだ。 “ジニョン、お願いだから僕を嫌わないでくれ。彼は彼女の怯えた顔を見て、とても悲しい気持ちに なった。彼は彼女の額にある髪をサイドに寄せて、優しく言った。 「ジニョン、どちらのドンヒョクかなんて重要じゃないんだ。どちらのドンヒョクもここ数日にわたり、君をひどく傷つけてしまった。すべて嫉妬心そして君を失う恐怖からきたものなんだ。僕は君を傷つけ、悲しませてしまったから、君が僕を容易に許せないのはわかるよ。僕のことを信頼してほしいと言いながら、昨夜僕は君をあのように扱ってしまった。昨夜君に言ったひどい言葉を撤回したい。僕はその罪のために、地獄に行かなければならない。君にしたこと、そして君に言ったひどいことに対して、神様は僕を地獄のもっとも深いところに僕を行かせるに違いない。しかしジニョン、君に知ってほしいことが一つだけあるんだ。本当のドンヒョクであろうが偽者のドンヒョクであろうが、どちらのドンヒョクも君を深く愛しているんだ。そしてその思いは彼らから切り離すことができないんだ」 ジニョンはドンヒョクの真剣な言葉に耳を傾けながら,彼を見ていた.彼女を見つめる暗く,深いまなざし はたくさんの愛情が溢れていた。ここ数日、なくなっていた彼女の愛情が戻ってきたように感じた。 “そうよ、彼は今、愛情に満ちた面持ちで私の前に立っている。” 彼女に対する彼の愛情はとても強く、そして激しかったので、いつの間にか、彼女をその愛情の中に 満たしていた。彼の愛情を感じ、彼女の傷ついた心の悲鳴を聞いて止まっていた彼女の身体の大部分が 動き始めた。彼の熱く、愛情溢れるまなざしが彼女の心に染み込み、そして彼女の心の中にあったすべて の痛みを溶かしていった。彼の愛情を感じることが出来るだけでなく、彼女は今、その愛情を見、 そして触れることができる。彼女の6感のすべてがその愛情を感じ、そして受け入れようとしていた。 “そうよ、どちらのドンヒョクなんて重要じゃないわ。” ドンヒョクから彼女に対する深い愛情を告白されると、彼女の涙があふれ、そして彼女の顔に流れ 始めた。そして彼女は優しく言った。 「ドンヒョク、あなたが地獄に行くなら、私も一緒にいくわ」 “その一言を言ってくれただけで十分だ” ドンヒョクは、彼の目に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。彼は彼女を自分の腕の中に引き寄せ、そして固く彼女を抱きしめ囁いた。 「ジニョン、ああジニョン。僕は君を愛してる….心から君を愛している….どうか僕を許して」 ジニョンは彼の大きな胸に自分の頭を埋め、そして静かにすすり泣いた。彼女の涙は、もはや怒りや 悲しみの涙ではなく、幸せと愛情に満ちた涙になっていた。彼女は見上げ、そして彼を見た。 「金曜日の晩、ソン管理重役とは何もなかったのよ。彼はアパートのオートロックの呼び出し音で私を 起こしたの。雨が降った晩の次の日、私の様子見にちょっと来ただけなの。私は彼に会いたくなかったわ。でも彼はしつこかった。だから私は嫌だとは言えなかったの。」 彼女の目は正直な目をし、かわいい天使のような顔には心配そうな気持ちが溢れていた。それを見て、 ドンヒョクの心は、罪悪感でいっぱいになった。彼は彼女の口に指を置き、そして囁いた。 「しーーー。ジニョン、説明する必要なんかないよ。すべてソン管理重役にひどく嫉妬した僕の責任 なんだよ。本当に君に悪いことをした。僕を許してくれる?」 ジニョンは彼の頬に触れ、そしてやさしく言った。 「結婚して以来、あなたが私の前で理性を失ったのは初めてだわ。そして私も。私があなたに平手打ちを したなんて信じられないわ。痛かった?」 ドンヒョクは彼の顔に置いた彼女の手を握り、その手に優しくキスをした。 「痛かっただって?僕は何億回以上も平手うちをされなくちゃいけないよ。君に冷酷なことをして 本当に申し訳ない。僕は大丈夫だし、そうされるべきだからもっとたたいてくれないか?」 「おばかさん、私がそのようなことが出来ると思う?」 ジニョンはそうつぶやき、そして続けた。 「ドンヒョク、私たち結婚して初めて喧嘩したのよね。」 「そうだね、はじめてだね。でももう喧嘩は最後にしたいよ。君が僕を無視したとき、この世の終わり だと思うほど辛かった。2回目の喧嘩なんて耐えることは出来ないよ。」 ドンヒョクは彼女の額にかかった髪をサイドに寄せた。 「嫉妬なんてしないで、あなたが嫉妬するとこなんて何もないのよ。」 ジニョンは彼の鼻の上を自分の指で突っついた。 「他の男と一緒にいるのを見て、嫉妬心を感じないなんて無理だよ….」 ドンヒョクは、自分の手で彼女の顔を優しく撫で、そして囁き続けた。 「他の男が君に恋したら君はどうしようもないだろ、僕の愛するジニョン」 彼はため息をつき、彼女の唇の方に自分の手を動かした。 「なぜ僕はこんなに君のとりこになっているんだろう?」 彼はそう考えながら、彼女の唇の方に身体をかがませ、そしてまるで彼女に対して謝るかのように やさしいキスをした。 “ジニョン、君にあんな乱暴なことをして本当に申し訳ない。” 彼のやさしいキス、そして彼の目に浮かぶ申し訳なさそうな面持ちを見て、彼女の心は和らいだ。 ジニョンはすぐに、彼が何を感じているかを感じた。彼はまだあんな強引なキスをしたことを後悔 していた。 “かわいそうなドンヒョク、あなたはまた私を傷つけるのではないかと恐れているのね?” 彼女はつま先で立ち、彼の唇にキスをした。彼は彼女のウエストを近くに引き寄せ、愛情溢れる思いで、 果てしなく唇を重ね続けた。彼女の手は彼の首の周りを抱きしめていた。二人は激しく唇を合わせ続けて いたが、ドアをノックする音で我に返った。 ジニョンは赤い顔で身体を戻すと、ドンヒョクはジェニーの声でドアを開けた。 「30分以上たっているよ。ランチの時間よ。お兄さん、お姉さん。」 ジェニーは兄の方を見て言った。 「ジニョンお姉さんと仲直りできたの?」 ドンヒョクはジェニーにうなずき、そして振り返り、魅力的な笑顔でジニョンを見た。ジニョンの顔は 今真っ赤で、ドンヒョクを通り超えて歩いて行き、ジェニーの手を握った。 「ごめんね、ジェニー。昼食の用意を手伝えなくて…」 「いいのよ、お姉さん。バーベキューの肉とサラダに私の新しいマリネソースをつけて試してみてね」 料理はとてもおいしく、ジェニーはいつものようにみんなから褒められていた。皆が大声で笑い、 そして楽しそうにおしゃべりをした。レオは非常にユーモアに富んだジョークや話をしていた。ドンヒョクもその雰囲気を盛り上げ、笑顔を浮かべながら非常に口数が多くなっていた。彼は絶えずジニョンの 皿に料理を置いていた。そしてそれを見てレオはからかった。 「フランク、こんな風にジニョンしか目に入らないのか?」 「レオ、君も結婚したらわかるよ。」 ドンヒョクは笑顔で答え、そしてジニョンの方に目を向け、そして続けた。 「それに、ジニョンはもっと太る必要があるんだ。それに比べ、レオはその脂肪を取り除く必要があるな。 僕はこのようにして君の願いを聞いてやっているんだよ」 ドンヒョクの言葉に皆が突然笑い出し、レオは苦笑していた。その大きな笑い声が、赤ちゃんを起こし てしまい、部屋の外まで聞こえるくらい大きな声で泣いた。スンジョンが自分の娘を部屋から連れてくる と、皆がすぐにかわいい赤ちゃんの周りを取り囲んだ。ドンヒョクはジニョンがとても大切そうに、 とてもやさしく赤ちゃんを抱きかかえているのをじっと見ていた。彼女の優しい目は赤ちゃんだけに 注がれていた。 “何て素敵な光景なんだろう!” レオはドンヒョクに言った。 「ほら見て、ジニョンは赤ん坊の扱い方がとても上手くなってきたよ。フランク、そろそろ真剣に 子供を作る準備をしたほうがいいと思うぞ」 ドンヒョクは微笑み、そして温かいまなざしでジニョンを見つめた。彼女の顔は明るく輝き、そして 赤ちゃんに夢中になっていた。スンジョンが突然ドンヒョクにたずねた。 「子供は好き?シン氏?」 ドンヒョクはどう答えてよいかわからなかった。彼は今まで一度も赤ん坊や子供たちを扱ったことも なければ、近くで触れ合ったこともなかったのだ。ジニョンは彼を見て、そして言った。 「ねえドンヒョク、このちいさなスン・メイを抱っこしてみない?この子はとてもいい子よ」 ジェニーはドンヒョクに場所を譲るために少し後ろに下がり、そしてジニョンの隣に座った。ジニョンは 彼に赤ちゃんを渡し、彼に抱き方を教えた。大きなドンヒョクが小さな赤ちゃんをやっとの思いで抱き かかえているのを見るのはとても愉快だ。でもジニョンはちゃんと横で手助けをしていた。ドンヒョクは なんとか赤ちゃんを抱っこすることが出来た。赤ちゃんも彼の大きな手や腕の中で動いていた。 スン・ミーは本当によい子で、ドンヒョクの手の中に座り、そしてジーと彼を見続けていた。ドンヒョク はおかしく感じると同時に、微笑ましい気持ちになっていた。 “…まるで幸運の玉手箱のように、彼の手のなかにある小さな命…” ヨンジェが突然大きな声で言った。 「彼らを見て、まさに本当の家族の光景みたいだ」 「本当ね、テレビに出てくるとても幸せな若い家族のようだわ」 ジニョンは自分の顔が熱くなるのを感じたが、ドンヒョクが微笑みながら赤ちゃんを抱っこしているのを 見ると、彼女の気持ちが和らいでいった。 “彼は子供が好きなんだわ。彼はいい父親になるための方法を学ぼうとしているわ。きっと最高の父親になるわ” 赤ん坊は動き、彼の手から片足がはみ出た。ジニョンは彼の手を持ち、はみ出た赤ちゃんの足を彼の 手の上に乗せた。そうすると赤ちゃんは彼の両手の上にちゃんと座ることができた。ジニョンはやさしく 彼に微笑んだ。 「ほら、もうあなたは赤ちゃんの抱き方を覚えたのよ。難しくないでしょう?」 彼女の笑顔はとても美しく、とても素敵だ。長い間、彼はその笑顔を見ていなかった。彼は幸せそうに 彼女に微笑みかえした。それは、長い間彼の顔から消えていた心から溢れ出た笑顔であった。 ランチの後、ジェニーとヨンジェは、レオとスンジョンと一緒にショッピングセンターに行きたがった。 ドンヒョクはジニョンの手を握りそしてささやいた。 「家に行こう、ジニョン」 「家に?」 「そうだよ。二人で午後からずっと一緒に過ごそう」 「車はどうするの?」 「タクシーで行こう。僕はここに車を置いて、明日仕事の後取りにくるよ。すべて準備はしてあるんだ。」 彼の愛情溢れるまなざしが、再び彼女の心を和らげていった。彼女は彼にうなずいた。 やっと彼らは家に帰ってきた。ジニョンは家の中に歩いていくと、とてもくつろいだ気持ちになった。二人はまだ週末しかここで過ごしていないのに、彼女にはまるで何年も住んでいるように思える。 “ここは二人の本当の家なんだわ”そうまさに本当の家“ ドンヒョクは、自分が座っているソファーの方に彼女を引き寄せた。 「ジニョン、何を考えているんだい?風邪のほうはどう?ここに救急箱があるんだ。何種類かの薬が 入っている。風邪薬飲むかい?」 「いいえ、大丈夫よ、ドンヒョク。後で風邪薬をもらうわ。ドンヒョク、この家に入ると、すぐに気持ち がくつろいだの。すべてがとても身近に感じ、そして愛着も感じるの。これはなぜかしら?」 「なぜなら、それは僕たちの家だからだよ。二人の本当の家だからだよ」 ドンヒョクはそう言って、指で彼女の髪に触れた。 “彼も同じことを思っていたんだわ” ジニョンはそう考えながら、彼の胸に頭をのせた。彼は彼女の手をつかみ、その手を広げ、彼女の手の ひらにキスをした。そして自分の顔に彼女の手のひらをのせ、そして優しく言った。 「ジニョン、嫌なことすべてがもうすぐ終わるよ。レオと僕は、僕達のブロジェクトに決着をつける ために来週から3週間とても忙しくなるんだ。そしてようやくJDメディチ社から去ることが出来るんだ。 そして僕たちは永遠にここに住めるよ。ジニョン、約4、5週間の間我慢して。その後、僕たちの スイートホームで普通の幸せな生活を送ることが出来るから」 ジニョンはドンヒョクの顔を見た。彼は物凄いプレッシャーを抱えながら一生懸命働き、そして取り 組んでいる。彼の顔に浮かぶ不安そうな表情を見ていると、何かしら不安な思いを抱えているように 思えた。 “彼は何を心配しているのかしら?” ジニョンは、彼がJDメディチ社から離れるために何かを計画しているのは知っていた。しかし、 それがどれほど深刻なことであるとは知らない。彼は彼女をジェニーと一緒にいさせて、週末にだけ 内密に会い、また人前では二人はすでに別れたような振りをしようと見せかける彼の思惑を考えると、 小さな問題ではないことは確かだ。はっきりしていることは、彼は彼女を彼のプロジェクトから外した がっていることだ。 “でもどうして、なぜそのようにする必要があるの?危険をはらんでいることを彼はすでにわかって いたの?” ジニョンは見上げ、そしてたずねた。 「ドンヒョク?JDメディチ社はあなたに対してそんなに複雑なことをしてくるの?」 「ある意味において、そうかもしれない。でも君の旦那様は用意周到で、このゲームに勝つ鍵を握って いる。だから君は何も心配することはないんだよ。もう少し待ってくれ。そうしたら僕たちは幸せな 生活をおくれるようになるから」 ドンヒョクはそう言い、彼女を励まそうとやさしく微笑んだ。しかし、ジニョンは彼の微笑みの中に、 わずかに浮かんだ一抹の不安を見抜いていた。彼女にはわかっていた。彼が彼女に心配させたくないこと やJDメディチ社との駆け引きに彼女を巻き込みたくないことを。彼女は話題を変えた。 「ねえドンヒョク、あの小さなスン・メイはとてもかわいいでしょう?」 「本当にかわいかったね」 「ねえ…..ドンヒョク….あなたは子供と関わり、子供を好きになる方法を知りたいと思う?子供は世話が かかるし、見守らないといけないので少し大変だと思うわ。でもあなたが腕の中で赤ちゃんを抱いている とき、赤ちゃんはあなたに微笑み、そしてその瞬間あなたの顔に浮かんでいた大変さが消えてしまうの」 ドンヒョクは、赤ちゃんのことを話すジニョンの得意げに話す表情を見て微笑んだ。彼は彼女の腕の中に 抱きしめて言った。 「そうだね、僕もそう思う。赤ちゃんは非常に大変だ。確かに大きな声で泣くし、おしめも取り替えな くてはいけないし、世話をするのは大変だね。」 ドンヒョクはそこで止まり、ジニョンの顔を見ると、彼女は顔をしかめていた。彼は彼女をからかい 続けた。 「他にも大変なことがあるよ。ちゃんと見ていないといけないし、夜中に授乳しないといけないしなあ。 つまり、手がかかるんだ…」 「ドンヒョク!そんな大げさに言いすぎよ。赤ちゃんは決してそんなにひどくないわ。」 ジニョンはがっかりした顔で言った。 「僕は大げさに言ってないよ。赤ちゃんがどんなに大変かイ・スンジョンマネージャーに聞いたんだよ。」 ドンヒョクはいたずらっぽく微笑んだ。 「でも、レオさえも赤ちゃんが好きなのよ。彼はスン・メイの世話をしているとき、とても幸せそうな 表情になるわ。それにとても楽しんでいるようにも思えるわ。」 ジニョンは、ドンヒョクの反応に少しがっかりしていた。 「彼は最近考え方が変わったんだよ。以前はそんなんじゃなかったんだよ」 「そうなの….つまり、あなたは赤ちゃんがあまり好きじゃないのね?」ジニョンは低い声で言った。 ドンヒョクはもはや我慢が出来ず、笑い出し、彼女をしっかりと抱きしめ、そして彼女の髪の上から 囁いた。 「おばかさん、もちろん僕は赤ちゃんが好きだよ。僕たち二人の赤ちゃんならなおさらその子を愛する だろう」 ジニョンは赤面した顔を隠すかのように、頭を彼の肩に乗せた。 “小さなスン・メイを手の中で抱いているドンヒョクの表情はとても素敵だった。彼が、あのたくましい 腕で私たち二人の子供を抱いているのを見れたら、どんなにか素敵だろう。” ドンヒョクは少し身体を動かし、彼女の顔を見つめた。そして彼女の鼻の先にチュとキスをして、 優しく微笑んだ。 「ジニョン、僕は君を愛しているし、君から産まれてくる子供ももちろん愛してる。僕たちの赤ちゃんは 二人の愛の結晶であり、証だ。その赤ちゃんは僕たちの一部分であり、肉親だ。僕は僕の人生にかけて 全力で、君と僕たちの子供を愛し、大切にし、そして守るよ。」 彼の愛情溢れる言葉を聞いて、彼女の不安が消え去り、彼女は彼の首の周りを腕で包み込み、彼の唇に 優しくキスをして囁いた。 「ドンヒョク、私もあなたを愛しているわ」 彼は彼女をしっかりと抱きしめ、そしてやさしくそっとキスを返した。ジニョンは、彼がまだあの雨の 夜のように彼女を傷つけないよう躊躇しているように感じた。彼女は、彼に自分の身体をより近づけ、 彼の唇に長く、そして深いキスをした。彼女の愛情溢れるキスが彼の心を熱くし、そして彼は何度も 彼女の唇に自分の唇を重ね合わせた。重ね合わせる唇がだんだん激しくそして熱くなり、うずくような 愛撫そして熱く這う手の感触が二人の熱く震える身体を燃え上がらせ、二人は興奮の渦の中に溺れて 行った。ドンヒョクは立ち上がり、そしてジニョンを寝室に連れて行った。その瞬間、そしてその場所で、 彼は激しく、心から彼女を愛し続けた。そして彼女は自分の身体のすべてを彼に委ねながら、身体を 駆け巡る官能の波に身体を震わせていった。 JDメディチ社の会議室で、ミラー氏はドンヒョクに一つのホルダーを手渡し、そして言った。 「これを見てくれ、フランク!」 ドンヒョクはそのホルダーを開け、そしてその書類にすばやく目を通した。それはドンヒョクが正式に イギリス本社の取締役会に加わるという提案書だった。ドンヒョクは顔を上げ、そして言った。 「ミラー氏、この決断は早急すぎると思わないですか?なぜならこの会社には経験からみても僕より 優れた重役が他にもいます。」 「フランク、なぜ僕が君をその地位に適任として推薦するか君もわかっているだろ?僕の説明は必要な いはずだ。僕は取締役会と協議し、そして君を特別扱いすることにしたんだ。つまり取締役会の一員に なっても、君はイギリスにくる必要はないんだ。重要な取締役会議やミーティングの際に出張してくれ れば、十分なんだ。君がソウルを離れたくないことは僕だってわかっている。」 ミラー氏は何もかも見通すような微笑で言った。その微笑を見て、ドンヒョクはまるで彼の罠にはすでに はまっているかのような不快感を覚えた。 「もちろん、取締役会の重役就任式がある。君はイギリスの本部の就任式に出席しなければならないよ。 取締役会から他の任務の引継ぎを受けるため、2週間ほどイギリスに滞在してほしい」 ミラー氏はそう続けた。 「イギリスに2週間ですか?」 ドンヒョクは困惑した表情でたずねた。 「そうだ、水曜日一緒にここを出発しよう。」 ミラー氏はそう言った。ドンヒョクはホルダーを閉じ、そして立ち上がった。会長がいったん決めたら 何を言っても無駄であることを彼はわかっていたのだ。 「僕はリサに飛行機のチケットの手配とスケジュールの調整をさせます」 ドンヒョクは腹を立てながら、自分のオフィスに戻った。 イギリスの取締役会は、出来るだけ早く必死に彼を取締役会に加わらせようとしているように思える。 なぜこの時期なんだ?反撃の準備をしている時に…。僕がそこに滞在している間、奴らは僕に自分たちの 仕事の不正な部分を明かしてくるだろうか?それはプロジェクトXの徹底的な証拠を手に入れる絶好の機会なので、イギリスの取締役会の本部の一員になることは悪いことではない。しかし、いったんそこに 入ってしまうと、自分は彼らの完全な配下に入ることになる。しかし、そのことについて躊躇っている時間はない。もし危険を冒さないと、自分は二度と彼らの配下から抜け出せなくなるかもしれない。」 ドンヒョクは即決をした。本当の獲物を獲るためにやつらの要塞に入ろう。行くしかない。今日は月曜日 だ。水曜日にイギリスに出発する前に、ここですべての準備をするのに残された時間は1日半しかないのだ。 ドンヒョクは、午後6時半に弁護士事務所を出て、その足でレオと会うためにスンジョンのアパートに 行った。そこは誰にも見つからずに会える最高の場所だ。彼とジニョンは正式に別れたと人々は思わせるためにも、彼がホテルで頻繁に見かけられることはあまりいいことではないのだ。レオはそのアパートの玄関で彼を待っていた。イ・スンジョンマネージャーはまだ仕事中なので、ドンヒョクと会うために部屋の鍵を借りたとレオは言った。ドンヒョクは2冊のホルダーと取り出し、それをレオの前に置いた。 「レオ、電話で話した通り、僕たちの計画を少し変更する必要がある。僕は水曜日に、取締役会の本部の一員に加わるために、水曜日にイギリスに行くことになったんだ。最初のホルダーは、僕が彼のオフィスでしらべたソン管理重役の情報が記載されている。もちろん、それらは彼に関する正式な詳細で、それを見ると、君は彼の住所や仕事の経歴そして彼の関係筋がわかる。それらは、君が証拠の在りかについて、彼から更なる情報を集める上で役に立つだろう。 「彼は結婚しているのか?」 レオがたずねた。 「いいや、彼は結婚していない。一種のプレイボーイだと僕は思う。」 ドンヒョクはそう言い、そして続けた。 「2冊目のホルダーには僕の資産に関するすべての書類が入っている。ホテルの株券、アパートと家の 不動産権利証書、それにすべての銀行預金と他の有価証券が入っている。今日の午後に、僕が作った遺書 も入っている。 レオはドンヒョクの資産の書類に目を通した。ドンヒョクの遺書には彼に何か起きた時、ジニョンに 全財産を、ジェニーにはホテルの株の20%を残すと記載されている。彼はなぜこれを作ったのか? 彼の命に関わる何か深刻な動きがあるに違いない。 レオはたずねた。 「これは水曜日にイギリスに出張に行くためのものなのか?フランク、その出張は、そんなに危険を はらんだ深刻なものなのか?」 「そうだ、今回は危険重大だと感じている。やつらは重役職への任命の後、僕に秘密事項を明かすだろう と僕は考えている。やつらは僕に絶対的忠誠をもとめるだろう。僕はその“忠誠”という言葉を“要求さ れる”という意味ではなくむしろ“守るよう脅される”という意味で使うべきだろう。僕はやつらの証拠 を手に入れる機会を得るわけだ。もちろん危険をはらんでいる。もし奴らが僕の動機を知ったら、僕は 事故に遇うかもしれないし、道端で犯罪人によって殺されるかもしれない…だから僕は出発する前に、 すべてのことを整えておきたいんだ。もし僕に何かが起きたら、僕の意思に沿うように、僕の遺書に 従ってほしい。僕に何かが起こるまで、ジニョンには決してそのことを知らせないでくれ。」 ドンヒョクはそう言った。彼の目はつよい覚悟に満ちていた。 レオは背中に寒気が走るのを感じた。ドンヒョクは覚悟を決めている。このハンターは自分の人生の中で、もっとも過酷なハンティングの旅に行こうとしている。そこでは捕らえられる可能性もある。 ドンヒョクは続けた。 「僕は秘密の携帯電話を使って、定期的に君と連絡を取るつもりだ。僕に直接連絡を取ろうとするな。 奴らはイギリスで僕が泊まるホテルの部屋に盗聴器を仕掛けていると思う。 証券取引委員会の職員との約束に行ってくれ。そして、僕たちが握っている詳細を彼らに提供してくれ。もしイギリスで重要な何かがわかったら、すぐに君に連絡する。証券取引委員会が、その詳細のすべてを 確認し、僕が予想する以上に早く責任追及を始めたら、僕が戻ってくるまで起訴するのを待って欲しいと いうことを彼らに頼んでほしい。」 「フランク、仮に奴らに知られてしまった場合、身を守るために国際犯罪防止協会と連絡を取る必要が あると思わないか?」 「君はインターポール(国際刑事警察機構)のことを言っているのか?そんなことをしたら、僕たちが しようとしていることを奴らに知らせることになる。僕はこの機会を生かし、見つかる前にここに戻って 来たいんだ」 ドンヒョクはレオにそう言い、立ち上がり、時計を見てたずねた。 「今日、ジェニーはイ・スンジョンマネージャーと同じ時間に仕事が終わるのか?」 「そうだ、午後8時だ。彼女はスンジョンが赤ちゃんを家に連れて帰るのを手伝うはずだ」 「それはありがたい。彼女たちはもうすぐ帰ってくるな。僕はジェニーと少し話がしたいんだ」 「ジニョンにはイギリス行きのこと、もう話したのか?」 「いいや、僕はさっき彼女に電話をして、明日ランチを食べる約束をした。レオ、僕がイギリスに行って いる間、僕の代わりにジニョンを見守ってほしいんだ。彼女は最近体調が悪いんだ。」 ドンヒョクは心配そうな目をしながらそう言った。 「そのことについては心配するな、フランク。僕たちは君の代わりに彼女を見守っているよ。」 ドンヒョクはうなずいた。彼はそれ以上何も言わなかったが、心からの感謝している目でレオを見つめて いた。実際、ジニョンの周りには仲のいい友達がたくさんいる。彼らが僕がいない間、彼女を助けてくれるだろう。 ドンヒョクは午後9時ごろにスンジョンのアパートを出た。彼の車は日曜日からずっとそこに駐車した ままであった。彼は近くに公園まで車で行き、そしてジニョンに電話をした。彼は明日の昼食をする レストランの住所を彼女に連絡した。彼女は夜勤のシフトでとても忙しそうだったので、彼は電話で イギリス出張の件に関しては彼女に言わなかった。彼女が電話を切ると、彼はここ数時間に起きたことを 考えながらしばらく公園に座っていた。今度のイギリス旅行はJDメディチ社によって仕掛けられた罠に 入り込むことになるかもしれない。僕には2つの選択肢しかない。一つ目は奴らの支配下に入り、奴らが今までしてきた不正行為すべてに関わるメンバーの一人になること。2つ目は断り、その結果もっとも 最悪なことが起こらないとしても、JDメディチ社の元重役たちに起こったことと同じような目に会うかも しれないということだ。しかしながら、ゲームはすでに始まっており、生き残りをかけて戦うために 前進しなくてはならない。ジニョンは明日のランチの時、再び僕が旅立つことを知ったらひどくがっかり するだろう。ただでさえ、僕が与えてしまったストレスのせいで、彼女体調は最近あまりよくないのに。すべてはもうすぐ終わる。この戦いに全力を注がなければならない。決して負けることは許されない。 シン・ドンヒョク、お前は、もっとも優れたハンターとして、このゲームで邪悪なハンターに捕まえられる前に、身をかわすためにハンターの経験から得たすべての手腕を使わなければならない。 |